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西瀬戸内海と台湾をつなぐライドの魅力(一青 妙)

「妙桑有去過ライフー嗎?(妙さんライフーに行ったことありますか?)」

あるとき、台湾の友人からこんな風に聞かれました。

「ライフー……?」

全く聞いたことのない単語で、しばらく考えてもわかりませんでした。

「不知道(わからない)」と答えたところ、友人が「ライフー是島波海道的那個(ライフーはしまなみ海道のあれよ)」と言ったところでハッと閃きました。

瀬戸を中国語では「ライフー」と発音するのです。日本語で聞き慣れた地名の漢字を中国語で発音されると、とっさに反応できず、理解できるまで時間を要することが時々起こりますが、ライフーもそのひとつでした。

瀬戸内海、瀬戸大橋、瀬戸内国際芸術祭……。友人は次々と瀬戸のつく場所やイベントの名前を挙げました。台湾人にとって「瀬戸(ルビ:ライフー)」の2文字は瀬戸内を意味する言葉で、とてもポピュラーな行きたい場所としてすっかり定着していることを知りました。

 一方、私にとって「ライフー」初訪問は2012年。台湾からやってきた人々と一緒に楽しむ「日台交流・瀬戸内しまなみ海道サイクリング」に参加し、人生初のロングライドにチャレンジしたときでした。

 このときに見た瀬戸内海の美しさや、エイドステーションで食べたはっさく大福”“牡蠣”“せとかの美味しさ、サイクリストを迎えて下される地元の皆さんの温かさをいつまでも忘れることができませんでした。

 以来、サイクリングにすっかりはまってしまい、台湾を自転車で一周する「環島」を2度成功させています。普段からロードバイクで日本のあちこちに出かけて、次はどこを走ろうかと考えている毎日です。
 またこのときの経験をきっかけに、四国との縁が深まりました。四国一周サイクリングPR大使として四国一周にチャレンジさせていただきました。愛媛台湾親善交流会での講演の機会を頂いたこともあります。プライベートでも瀬戸内を訪れることもあり、私の中で「ライフー」の存在感は高まる一方です。

新型コロナの影響で、日台間の往来がままならず、日本人の台湾ロス、台湾人の日本ロスは随分と深刻です。そんな折、西瀬戸内海と台湾の懸け橋となるWeb交流マガジンMOBURU+」が立ち上がるという嬉しいニュースが飛び込んできました。記事に加えて、楽しい動画コンテンツもあるそうです。しばらくはバーチャルで現地情報を楽しみながら、一日も早くリアルな往来が再開されることを待ちましょう。

ところで、MOBURUとは、愛媛県松山地方の方言で「混ぜる」という意味だとか。日本と台湾が混ざり合い、たくさんの情報を多くの方に届けるサイトになる気がします。「MOBURU+」を通じ、私の人生にサイクリングという趣味が加わるきっかけとなった「ライフー」=瀬戸内と台湾の縁が、より一層深まっていくことを願ってなりません。

 

ABOUT ME
一青 妙
一青 妙
作家・女優・四国一周サイクリングPR大使として日本と台湾を繋ぐ。主な著書は「私の箱子」「環島 ぐるっと台湾一周の旅」など。