日本の伝統工芸品で愛媛県特産の陶器「砥部焼」を台湾の人たちにも使ってもらいたい―、砥部焼を通して日本と台湾の文化交流を進めたい―とMOBURU+では「台湾で砥部焼プロジェクト」を2021年夏からスタート。コロナ禍の同年12月、台中と台北でリモートによる砥部焼絵付け体験講座を開催しました。
コロナ禍にも関わらず、台中の会場は台湾知日協会で12月3日に行い、同協会の宋明吉理事長をはじめ、約20人が参加。5日には台北市中心街にある幼瀬明月和菓子茶舗で行い、15人が参加した。リモートで日本と台湾を結ぶ新たな取り組みとしてマスコミでも大きく取り上げられ、国内外に報道された。
翌2022年2~3月には台湾陶磁器のシンボル施設「新北市立鶯歌陶瓷博物館」で行われる予定。
同講座は砥部焼販売協同組合が主催し、台湾知日協会と三浦工業の協賛で行われた。砥部焼の窯元「千山窯」から素焼きを台湾に送り、台湾で調合した顔料を使い、参加者が絵付けをする。砥部焼の説明、絵付け方法などは各会場と窯元をリモートでつなぎ、陶工たちがライブで手ほどきした。
台湾で日本の伝統工芸を絵付け体験する機会はおそらく初めて。ましてコロナ禍の中、リモートによるライブ中継は初めて。これまで多くの観光客などに絵付け体験を手掛けてきた千山窯の陶工たちも通訳を介して海外と行うのは初めて―と、まさに初挑戦づくしだったが、受講した台湾の人たちは会場に設置されたモニター画面を食いつくように見つめ、思い思いの作品を制作した。講座を行った千山窯の藤野明紀さんは「リモートにもかかわらず、距離感を感じないほど一体感があり、面白かった」、台北会場で参加した男性は「日本の伝統工芸品を作る貴重な機会に興奮した。これをきっかけに砥部町を訪ねたい」と力を込めた。
絵付けされた作品は、台湾で調合された釉薬がかけられ、台湾・新竹市の窯元で焼成された。調合や焼成技術は千山窯から鶯歌陶瓷博物館の研究者を通して新竹市の窯元に伝えられた。窯業技術の交流も図られたことになる。
「MOBURU+」が参加者に行ったアンケート調査では9割以上が「満足」と大好評。台湾側で同講座をコーディネートした丸虎国際顧問公司によると「コロナ禍による規制が緩和されたら、参加者はもっとたくさん募れる」と自信を見せた。
同講座を企画する過程で台湾の焼き物のルーツに砥部焼が深くかかわり、戦前は台湾でも精力的に砥部焼が販売されていることもわかり、全国ニュースとなった。
砥部焼販売協同組合の泉本英明理事長は「今回の体験講座をもとに台湾で砥部焼を広げていくことに手ごたえを感じた。台湾と砥部焼の歴史的な縁もわかったこともあり、焼き物を通して台湾と砥部・愛媛相互の観光、物産、文化、教育交流へとつなげたい」と期待を込めた。